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  • 執筆者の写真Kei Tomoda

【コラム】二拠点生活について考える ~子どもたちの教育は?

更新日:2022年12月6日

以前から、私の二拠点生活の体験について書いてきましたが、今回は子どもへの影響について書きたいと思います。

子どもも含めた家族を巻き込んで二拠点居住や地方移住をする際に必ず検討しないといけないのが、子ども教育問題です。


私も2人の子どもがいて、二拠点居住を始めた12年前は2人とも就学前でした。

我が家は移住ではなく、基本的には私一人が二拠点居住をしていたので、子どもの幼稚園/保育園や学校については、大きな影響はありませんでした。

一方で、二拠点生活をする中で私自身が感じた子どもの教育の問題は、いくつかあります。



地方と都市の「教育の質」


大阪で生まれ育ち、教育もほぼ大阪で受けて、自分の子どもたちも同様に育った我が家からみると、やはり地方と都市の教育の質には差があるといわざるをえません。


なかでも一番大きな違いは、「多様性」です。

人口が多い都会にはいろいろな背景の人がいて、子どもたちは学校や地域でいろいろな人に会い、もまれて、意識すればするほど、自分を相対化する機会があります。

教育現場も多様性への対応は不可避であり、同質的な教育は成り立ちません。


都会は比較的「インクルーシブ教育」が盛んであることも影響しているかと思います。

障害を持つ子も通常学級で過ごす時間が長く、そのなかでさまざまなコミュニケーションやサポートが自然と生まれていきます。


他方で、地方の教育現場をみると(実際に親として関わったことはありませんが、二拠点居住をする中で見聞きしたことから考えると)、旧態依然とした同調圧力の大きさに驚きます。

そのうえ、教育機関のバリエーションや選択肢が少ないので、同調的な学校になじめない子の居場所が少ないのが実情です。


これは教育だけではなく、地方都市のコミュニティ全般にいえることだと思います。

障害があったり、性的マイノリティであったり、少し周囲と違う背景や価値観を持っていたりと、「差異」を抱えた人にとって、地方よりは都市の方が住みやすい。

自分と同じ境遇の人と出会いやすいし、自身の匿名性も担保されやすいからです。


二拠点生活をしていること自体が地方ではまだかなりの少数派ですから、その時点で「変わった」家族になります。

子どもの社会の中心である学校で、多様性や違いが認められ、受け入れられる余地が少ないのは、「遅れている」といわざるをえません。


学力テストの成績


私が二拠点居住をしている石川県は、全国学力テストで成績上位の常連です。

でも、学力テストというのは教科書を勉強すれば点数がとれます。


石川県は、比較的宿題が多いと聞きます。

同調圧力のなかで繰り返し、たくさん勉強すれば、おのずと点数も上がります。


学力テストの成績が上位であることを否定する気持ちは全くありません。

ただ、学力テストの成績だけで「教育レベルが高い」とするのは、無理があると思うのです。


小さな子どもの預け先


学校について感じるところを書きましたが、地方では就学前の子どもの預け先も選択肢が少ないのが現実です。


移住先ですぐに両親ともに就労して保育園を利用するケースは少ないでしょうから、単発の預け先を利用することが多いと思います。


その際には、「その市町村の住民である」というしばりがあります。

移住していると問題ないのですが、二拠点居住で住民票を移していないケースでは利用できません。


だからといって、民間の預け先は都会のようには充実していません。

一時保育の利用だけではなく、いわゆる子育てコミュニティ(サークルのような集まり)への参加も、二拠点居住の場合は限定的となるでしょう。


「孤育て」という言葉があるような世の中で、小さな子どもを抱えた家族が孤立しないような二拠点居住のあり方は、公共だけでなく、住民ベースで子育てコミュニティを確保できるかを検討しなければいけないと感じます。


特色ある教育リソースの増加


二拠点居住とか地方移住などが注目されるようになるなかで、子どもの教育問題も避けられないこともあるのか、地方にも特色ある教育機関の開設が増えてきました。



枚挙にいとまがありませんが、移住先としても人気の地域に多く、教育内容をみても、英語や子ども同士の対話、自然や食育を重視するなど、「いまどき」で魅力的です。


しかし、これらの教育機関は民間の運営なので、費用もかかります。

利用できる家族は、かなり限られるのではないでしょうか。


学校以外での経験


地方の学校教育について思うところをやや批判的に書きましたが、学校外での経験は実に豊かです。


例えば、能登地方は「お祭り」が非常に盛んです。

我が家の子どもたちもずいぶん多くのお祭りに担い手として参加させていただきました。


お祭りに参加し、時間・場所・思い・盛り上がりを共有することで、その土地やその土地の人たちとの距離がぐっと縮まります。

それがないと、いつまでたっても「よそ者」のような立場なのが、一気に「コミュニティの一員」のような気持ちになります。



2018年(長男12歳)          2022年(長男16歳)


我が家の子どもたちは特に現地の学校などとは接点がなかったので、二拠点居住というより「旅行先」のような感覚になっていたかもしれません。

それが、お祭りという地元のイベントに参加していくなかで、単なる旅先とは違い、いまでは「第二の故郷」だと感じているようです。


教育現場や地域コミュニティの同質性や閉鎖性について書きましたが、私の二拠点居住を通して、家族ぐるみで地域での暮らしを経験しているうちに私や私の家族を受け入れてくれた、地域の温かさや懐の深さは、都会ではなかなか味わえないものです。


これも地元のコミュニティとのつながりがあるからこそ、可能になったことです。

移住でも二拠点生活でも住民ベースのコミュニティに参画できるかは大きなポイントだと思います。



息子は、なぜか外国人ツアーにも参加して、新聞にも載りました(笑)


二拠点居住と子どもの成長


お祭りだけではなく、能登半島はいろいろと旅行もしました。

私が二拠点居住で使用しているのは「佐野邸」という古民家で、家族と一緒の時も基本的にはそこに滞在するのですが、たまには外で泊まらないと飽きるので(笑)、温泉旅館や海沿いの民宿などに泊まることもあります。


そこではまず、当然、ご飯が美味しいのです。

能登の海の幸、山の幸だけではなく、白米がうまい。


息子は成長期の上にスポーツをしているので、とにかくよく食べます。

ある民宿で、家族で夕飯を食べる際に大きなおひつでご飯がでてきたのですが、息子がおひつを空にしてしまったこともありました。

民宿の方には初めての経験だと驚かれましたが、たくさん食べたことを褒めてもらい、息子にとっては美味しいご飯とともに素敵な思い出になったようです。


また息子は、高校野球球児なのですが、能登で私の友人がフィットネスクラブのトレーナーをしているので、長期休みで能登に来るたびにパーソナルトレーニングをお願いしています。



娘も、能登に来ると大阪ではあまり食べない魚料理を食べられます。

私の仕事上つながりのある大学生に一緒に遊んでもらったり、勉強を教えてもらったりということもありました。

小学校高学年になったあたりからは、子どもたちも能登での居場所を見つけたようで、のびのびと地域での時間を楽しんでいて、成長を感じました。



二拠点居住で得た最大の教育成果


地方に行ったときに感じる食べ物の美味しさと豊かさ、

日本の食を支えている地方の一次産業、

雄大な自然との共生、

そこでの暮らしやなりわい


地元の人は当たり前に感じていることが、都会に住む人間にとっては、驚きがあり、感謝と敬意を感じずにはいられないことです。


我が家の子どもたちには、都会にいるとまず考えることのない日本の地方にある一つのまちについて、「第二の故郷」であると感じ、都会と地方という二つの視点をもつことができた。


それが二拠点生活を通して子どもたちが得た、最大の教育成果だったと思います。







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