前回コラムに続いて、日本のB Corpの3例目を紹介します。
③ CFCL(B Corp認証取得:2022年7月)
2021年に創業した新しいファッションブランド
CFCLは、「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」を6年にわたって率いた高橋悠介氏が2021年に立ち上げたブランドです。
技術を駆使した無縫製のウエアなどを発表し、デザイン面、機能面、価格面で優れていると好評を得ています。一方で、サステナブルの意識も高く、物作りからビジネスの手法まで、時代の変化や人々の生活に寄り添う最適なかたちを追求していることが評価されています。
服作りを通してより良い社会を作りたい
高橋氏によると、ブランド名に自身の名前をつけることよりも、機能的であったり環境フレンドリーであったりなど、時代が求める服を作り、技術と革新で社会をよく変えていきたいという思いを込めたといいます。
そして、ファッション業界においても、表面的な高級感だけではなく、生産背景や環境、サプライチェーンの透明性などに、消費者の価値がシフトしていると実感しているそうです。
CFCLの全製品の約7割は再生素材で、その使用率が服のラベルに記載されていますが、環境面でサスティナブルなだけでは経営的には持続しがたいので、物づくりも追求している姿勢は、非常に現実的なモデルを提示しています。
2022年に日本のアパレル業界初のB Corp認証を取得
B Corp認証に関しては、ブランディングのためではなく、従業員や環境などについて具体的に取り組むためで、そのことで消費者の共感や信頼が得られればと表現しています。
積極的なアクションは容易なものではありませんが、サプライチェーンの中でも根気よく説明を繰り返し、新しい価値に対する理解と共感を得ていく作業を行っています。
「ファッション業界に限らず、地球に暮らすみんなでスクラムを組んで取り組まないと、この先も“変わらず”皆が幸せに地球に暮らし続けることはできない。変化しないための変化が必要で、それが今なんだと思う」(出典:気鋭ブランド「CFCL」が見た「国際標準のサステナビリティのリアル」 - WWDJAPAN)という高橋氏の言葉には重みがあります。
また、「仕掛ける側か仕掛けられる側かに分かれるなら、仕掛ける側に回らない限り、その企業自体の存続が危うくなってくるとも思う。同時に生活者のリテラシーも確実に上がっているから改めて襟を正したい。…小さいことの積み重ねで気がつけば「あれ、この会社こんな風だったっけ?」となる。全社員の意識が低下していないかは常に自覚してゆきたい。」(出典:「CFCL」がBコープ認証を取得 日本のアパレル初 「世界規模のコミュニティーの中で挑戦してゆく」 - WWDJAPAN)
スタートアップ時にB Corp認証を取得することで企業として成長し、社会的な共感を得ながら社会の変革にも貢献していくモデル企業となるでしょう。
創業者の思いや努力があってこそですが、B Corpはその価値観やプロセスを法的に守り、世界的なコミュニティの一員としてチャレンジの場を与えてくれます。
社会課題は「障害でなく成長のエンジン」
岸田文雄政権の経済政策は、社会課題を「障害でなく成長のエンジン」としてとらえて、さまざまな課題には民間の事業につながるニーズがあり、解決方法を示せば、マーケットは広がるという考えにたっています。
実際に、短期的には利益や配当が減ることになっても、長期的には社会に信頼される企業に投資した方が利益が大きいと考える投資家は増えています。
岸田政権の考え方はソーシャルのビジネス化であり、B Corpはビジネスのソーシャル化であって、ベクトルは違いますが、「課題」を「価値」に変換し、従業員や顧客、地域社会や環境に広く恩恵をもたらすという観点は共通しています。
日本での「新しい資本主義」と世界的なB Corpの広がりを考えると、地球規模で多様な課題が認識されているなかで企業がどのように課題解決に貢献できるかは、これからますます期待され、重視されていくと思います。
新しい経済セクター創出のために必要な視点
ビズデザイン大阪の代表:友田は、市議会議員時代に、複雑化する社会問題のすべてを行政が担う限界を痛感しました。
そして、ビジネスの分野で社会課題解決に取り組むようになりましたが、倫理観や道徳観に欠けた企業が社会課題を引き起こしている要因の一つであると実感しました。
その経験から、CSR(企業の社会的責任)を重視して、事業支援を行ってきました。
CSRといっても、企業が良いことをしているとアピールする裏で、従業員や取引先が犠牲になっていたり、環境に負担がかかっていたりという話はよくあることです。
また日本では、社会貢献活動というと「環境問題」への取り組みが圧倒的で、他の部分がないがしろにされていることがあるのも特徴です。
そういった観点から、提供する商品やサービスを含んだ企業活動全体を総合的かつ多角的に評価するB Corpの考え方に共感し、日本でももっと普及することを願っている次第です。
CFCLの高橋氏の言葉にあるように、企業は仕掛ける側に回らないと衰退します。
事業活動を継続するなかで、小さな「あたりまえ」(慣習)も蓄積していきます。
その「あたりまえ」をつきつめて、アップデートする企業だけが成長します。
逆に、「あたりまえ」に縛られていると、新しい価値は生み出せず、衰退していきます。
B Corpがもたらす可能性
ビジネスとソーシャルが切っても切れない関係にあり、変化が目まぐるしい現代社会において、企業が社会課題に取り組み、経営基盤も安定する。
その好循環を生み出すためには、ビジネスをソーシャル化する視点で経営をとらえなおすことが必要です。
自社の”あたりまえ”を見直して、
自分の会社は何ができるか。
本当に必要な人に届くサービスは何か。困りごとを解決できるか。
自社内だけの小さな世界ではなく、世の中の役に立つか。
誰か・何かを犠牲にしていることはないか。
まさに「誰一人取り残さない」SDGsの視点で、丁寧に問いを深めていっていただきたい。
そこで、具体的で積極的な指針となり、大きなチャンスとチャレンジを与えてくれるのが、B Corpです。
B Corpを取り入れることで、新しい収益モデルやソーシャルバリュー、会社を強くするヒントが得られ、会社の持続可能性と社会の持続可能性につながっていくと信じています。
✔ B Corp認証を検討してみたい
✔ B インパクトアセスメントに沿って、事業内容や社内規範を見直したい
✔ 社会的・環境的パフォーマンスを向上させたい
✔ 自社のサービス・商品の良さについて、第三者認証を取得したい
✔ SDGsについて具体的な取り組みをしたいが、道筋が見えない
✔ 企業でSDGs・CSR・広報などを担当している
✔ 自社のサステナビリティ関連の取り組みを検討している
✔ 社員のチームビルディングにアイデアが欲しい
✔ B Corpの理念について勉強したい etc..
どのような関わりでも結構です。
B Corpにご関心があれば、ぜひ一度、ビズデザイン大阪にご相談ください。
【B Corp⑤】日本のB Corpの事例と今後の展望(後編) ←今ここ
Commenti