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  • 執筆者の写真Kei Tomoda

【コラム】ポートフォリオワーカーいう働き方 ~選択肢をもつことの強み~

更新日:2023年3月5日

私は、5年以上も「ポートフォリオワーカー」という働き方を続けている。


ポートフォリオワーカーとは?


一言でいうと、複数の仕事を組み合わせながら働く人のことを指す。

「ポートフォリオ」の由来は、金融業界で「金融商品の組み合わせ」を意味する用語で、リスクを管理するために資産を複数の金融商品に分散させて投資する際に使用される。

それを「働き方」に当てはめたものが、ポートフォリオワーカーである。


つまり、一つの仕事が破綻したら経済的に立ち行かなくなるような働き方ではなく、一つを失っても他でカバーできるような働き方といえる。


ポートフォリオワーカーという言葉は、ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授らによるLIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本の日本語版が2016年に出版されたことから注目を集めるようになった。


本書のなかでは、「ポートフォリオワーカーは働き方であり、生き方である」と解釈されている。そして、今後新しく登場する人生の3つのステージが紹介されている。


・エクスプローラー(Explorer):人生100年時代の新しい世界を探求する

・インディペンデント・プロデューサー(Independent producer):組織にとらわれない独自のキャリアを創造する

・ポートフォリオワーカー(Portfolio worker):複数の仕事を組み合わせて働く


人生100年時代においては、変化を経験する機会が増えるため、選択肢をもっておくことの価値が増す。

そのためにこの3つのステージを戦略的に選びながら学び続ける必要性があると論じている。



選択肢は多いほど強い


複数の仕事や活動の場を選択しながら働く強みは、経済的なリスクを軽減するだけにとどまらない。

複数のスキルを体得し、組み合わせることで自分ならではの価値創出ができることも大きなメリットであり、それを発揮する場所も自分で選んでいける。


私の場合は、3つの会社の経営者でもあり、大阪と七尾(以前は東京)を行き来する二拠点

生活も続けている。

仕事に関しても、働く場所・住む場所についても、複数の選択肢を持っていることは大きな強みであると実感しているし、自分の人生を豊かにしているとも感じている。



▼参考コラム



組織として進化するためにも


私がローカル・ソーシャルビジネスでつながりが深いNPO法人ETIC.という団体は、2021年5月に組織変革を行った。


そのなかでは、「『組織全体で大きな目標と戦略を定め、それに従って各部門が事業を進めていく』という、多くの組織で一般的なこのスタイルを、エティックでは既に採用していない」という。


「取り組む課題も個人のモチベーションも多様化する中で、『組織が決めたからやる』『全体の戦略に従ってやる』というよりも、『一人ひとりが何かをやっていきたい』という意思を開放していく方が、結果、世の中が変わっていく」


現状と課題をチームでしっかり把握したうえで、成果については、各チームメンバーの自律的な動きにゆだねる。

「組織」は、課題を自分ごとととらえながら参画していく個人を認め、見守る。

そのことで個人の可能性が引き出され、組織としても変化への対応や変革が進む。


つまり、組織としても、働き手の多様な選択肢を受け入れることで変化への対応やリスクヘッジが可能になる。そのことで組織としての価値の差別化や独自化も図れるというガバナンスのあり方は非常に興味深い。



選択肢がない集団が陥る悲劇


逆に、選択肢がない集団はどのような帰結をたどるのだろうか。

刺激的なタイトルであるが、示唆に富んだ記事がある。


詳細は記事に譲るとして、ここで取り上げたい点は、

選択肢をもたない集団が外からの提案に従って何かを決めた場合、自分ではコントロールできないような大きなシステムの一部となり、元にも戻れなくなるという結果(記事のなかでは「構造的貧困」と定義されている)を招くということである。


なぜそうした悲劇を招くのかというと、決定を下すときの情報が偏っていることと、人間は短期的な利益を評価しがちであるという点が挙げられている。


自律的であっても、限られた視野で目先の利益を優先する決定を行う場合、大局的な見方においても、長期的な見方おいても、当初は全く意図していなかった非自己決定的な依存(それ以外に選択肢が存在しないように依存する状態)に陥ってしまうのだという。


貧困とは、お金がないことではなくて、選択肢がないことなのだ。

選択肢があれば、一人でいることは孤独であっても孤立ではない。

選択肢を持っておく(持っておける)ということは、非常に重要なことだと思う。



人生100年時代を生き抜くために


「生き残る種とは、最も強いものではなく、最も知的なものでもない。最もよく変化に適応したものである。」

―― チャールズ・ダーウィン(イギリスの自然科学者、『種の起源』著者)


いまから20年後にはサラリーマンは消滅しているともいわれる一方で、ヒトは100年近くを生きる時代になっている。

若い世代は特に、これまでの「学んで、働いて、老後に向けて貯蓄する」というライフスタイルで生き抜くのは難しいと感じていると思う。


人生のいろんなステージで、複数の仕事や活動の場を戦略的に選択したり、組み合わせたり、切り替えたりしながら、経済的な自由と精神的な自由(豊かさ)を追求していく。


そうしたポートフォリオワーカーという働き方・生き方において、「選択肢をたくさんもつ」ことがものをいう。


変動の時代を生き抜くための一つの手がかりになれば幸いである。



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