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執筆者の写真Kei Tomoda

大学の講義や企業研修で大切にしている2つのこと

毎年、企業の社会的責任(CSR)についての講義を担当している神戸学院大学にて、今年はジャニーズ事務所とビッグモーターのニュースを題材に、授業を行ってきました。


2つの企業による不祥事は大きく報道されている通りですが、大学生にとっては身近な企業であるものの、


・何が問題になっているのか?

・問題はどのようにして起きたのか?

・問題を解決するためにはどうすればよいのか?


を突き詰めて考えることはほとんどなかったと思います。


授業では、学生同士でグループディスカッションして、問題の構造を図解して発表してもらい、企業の社会的責任について考えてもらいました。



ラーニングピラミッド


大学での講義や企業の研修などでは、グループディスカッションを積極的に取り入れるようにしています。

アメリカ国立訓練研究所が提示した「ラーニングピラミッド」という考え方があり、ピラミッドの下にいくほど、学習の定着率が上がると言われています。




公教育の現場などでも「アクティブ・ラーニング」の取り組みは徐々に広がっている一方で、討論する内容が適切かについては疑問を感じることもあります。


たとえば、ジャニーズ事務所の問題をグループで議論するにしても、オーナーによる性加害があり、何十年もたってから被害者からの告発によってようやく表沙汰になって会見が行われ、事務所は解体し、数百人に及ぶ被害者救済に向けた動きが始まった。

これでは、問題の表層しかとらえていません。


どんなことが問題になっているのかを捉えたうえで、なぜその問題が起こり、何十年も表面化しなかったのか、という歴史的経緯と社会的な構造について、関わりのある人物・企業とその関係性を説明できるかが、非常に重要です。


日本の学校現場では、歴史の授業でも、いつ・どこで・なにが起こったかを暗記させるだけの授業がまだ行われているし、政治の授業でも制度面などの形式的・表面的なことが中心です。

そうではなくて、歴史的イベントに至るまでの時間的な経緯や世界的な流れを把握し、「こういうことがあったから、こういうことが起こった」ことを理解し、世の中についての理解を深めるという視点が足りないと常々感じています。

そこに自分の意見を表現する、他の人の意見を聞きながら議論を深めていくという作業に至っては、ほとんど行われていないのが現状ではないでしょうか。

「歴史は繰り返す」のに、歴史から何も学んでいないように思えるのです。


私は高校時代にアメリカに留学した際に、アメリカ史の授業で第二次世界大戦についてディスカッションしたことがあり、今でも鮮明に覚えているぐらい衝撃的でした。

日米の、考えること、議論することの積み重ね、トレーニングの量の圧倒的な差と、アクティブラーニングの底力を見せつけられて、日本は外交や交渉の場面で絶対に勝てないと感じました。



図解して説明する


社会問題についての理解を深め、議論をよりわかりやすくするために、私が意識している方法は「図解して説明」することです。

ジャニーズ事務所やビッグモーターの問題に関係している人物をすべて書き出して、それぞれの関係性を矢印と文言で見える化する。

その作業もディスカッションで行うのですが、各グループで違った意見や視点が出てくると、更に視野が広がります。


正解・不正解ではなく、「そういう視点もあったか」と捉えることが大切なのに、今の世の中は、正誤の二元論や自分の意見・他人の意見で切り捨てられてしまう局面が非常に多いと感じています。


アクティブラーニングは、二元論では収まらない学びができるのも魅力です。

学生さんたちには、社会問題の構造を歴史的・社会的に捉えることとと同時に、そこにはいろんな視点や意見があることも体験として学んで欲しいと考えています。

一人の先生が「問題」を教えるよりも、その問題をいかにわかりやすく多面的・体系的に考え、説明できるかをトレーニングする気持ちで講義にのぞんでいます。


ちなみに、学生さんたちが発表した図は、このような感じです。

ここに、足りない視点について問いかけたり、補足したりという講義を行いました。




手を動かす


コンサルティングを始めた頃は、「まず手を動かせ」「なんでもいいから書け」とよく言われました。

「勉強がよくできる子の特徴」という記事でも、勉強ができる子は難しい問題が出たときにもまず手を動かし、数字でも図でも何でもいいから書き始めると読んだことがあります。


答えが見えない難題に出くわしたときに、ぼーっと考えるのではなく、とにかく関係があると思うものを書き出し、それらを関係づけ、解への糸口を探る。


これはまさに、コンサルティングという仕事そのものです。

会社の経営改善しかり、地方活性化しかり。

時系列のつながり、社内外・地域内外のつながり。

図解で、できるだけ多くの矢印を書き出すことがポイントです。

一体、どこにどのような問題・思惑があり、現状を打破するには、どこに働きかければよいのかを対話のなかでとことん掘り下げて、客観的・本質的に捉えるお手伝いです。


私は、コンサル業が要らない世の中が目標です。

自分の問題を図解して、自分で解決の糸口を見つけることができるようになれば、コンサル業は不要です。


学生さんたちには、そのような社会づくりに少しでも貢献できるようになって欲しい。

そんな願いも込めて、講義や研修をお引き受けしています。


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